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それは夜遅くの事だった。
コンコン
「何じゃ、こんな時間に」
「私は旅人の狐で御座います。どうか一晩、宿に泊まらせて下さい」
「それは無理じゃ。見ての通り、ここは鳥のお宿。あんたを泊まらせる訳にはいかない」
「そこをなんとか」
「無理なものは無理じゃ」
「そうですか。分かりました。別の宿を探してみます」

翌朝、鳥の宿前にて
「さあ、お客さん、見ておくれ。ここにある品、そんじょそこらの品と違うよ。なんと天竺で仕入れた貴重な珍品、クジャクの羽根だ。これを身に付けたものは皆の注目を独り占め、異性なんか放って置いても寄って来るよ」
「私にください」
「ちょっと、私が先よ。いくらなの?」
「お嬢さん、綺麗だからまけておくよ。持ってけ泥棒」

その夜
「おお、ここにもいたか。今日は大漁だな。君達、あんな大きな羽を身に付けたら飛べなくなるに決まっているだろう。欲に駆られるとろくな事にはならないよ」
公開:20/03/25 12:32

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