届かぬ思い

4
4

その日は急いでいたので、階段ではなくエレベーターを使うことにした。鉄の扉が開き、男が1人顔を背けるようにして足早に降り去る。何かブツブツ言っているようだったが…

ん?
うっっ!
箱中に臭いが充満している。
…あの男、やりやがったな…

なんてこった!
口で息をしてやり過ごすしかないじゃないか。
しかも、乗っているのは自分だけだ。これでは誰かが乗って来たら自分のせいだと思われてしまう…

幸いにも誰も乗らないままゆっくりと箱は止まったものの、誰も居ませんようにとの最後の願いも虚しく、扉が開くと憧れの美人秘書が立っていた。

なんてこった!
下手な言い訳をする訳にもいかず、とっさに顔を背けて足早にその場を去る。

「忘れて下さい忘れて下さい。自分ではないんです自分ではないんです。」
心の中でそう唱え続けるしかなかった。

もしかしたら
さっきの男もまた犯人ではなかったのかもしれない。
その他
公開:20/03/25 11:25

文月そよ

のんびりゆるぅり書いてみたいと思います。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容