涙を流す物置

玄関に置かれた石でできた蛙の置物の目の下が濡れているのに気がついた。
そうか。蛙は雨が好きだ。
日本は梅雨を空け、本格的な夏に突入しようとしている。
雨が降るのが減るから寂しいのかなと私は思いながら蛙の置物の頭を優しく撫でる。
最近の空は夏の準備のためか雨があまり降らない。
今日も晴天で私たちは気分がいいが蛙はそれに比例して落ち込んでいるのだろう。
少し経つと空に灰色の幕のような雲がかかり、ポツポツと雨粒が洗濯物を濡らす。
近くの家々から人がせわしなく現れて洗濯物を取り込んでいる。私の母もしかめ面で洗濯物を抱え込んで家へと駆け込んでくる。
私は久しぶりの雨に一喜一憂するわけでもなくボーッと次第に強くなる雨を眺める。
母のように雨を毛嫌いするような面持ちの人が何人くらいいるだろう。そんなことを不意に思う。
ふと蛙の石像を見る。目元の湿り気は無く、かすかに口角が上がっているように見えた。