桜の花園

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例年より暖かかったので、早めに満開を迎えた桜並木では、その直後に季節外れの雹が降るなど異常な寒さが続き、今まさに桜吹雪となって花びらが舞い散ろうとしていた。
歩いていた道端は、瞬く間に桜の絨毯のようになった。すると、足もとが宙に浮き、魔法の絨毯のように上空へ飛び立つと同時に、周りが眩しい光に包まれた。

――ここは桜の花園です。急にお呼び立てしてしまい申し訳ありません。こんなに早く咲いて散ってしまう私や仲間は病気なのでしょうか?
テレパシーのように俺の脳へ語りかけてきたので、会話するような感じで返答してみた。
「いえ、地球は気候変動の影響で、温暖化したり寒冷化したり目まぐるしいのです。われわれ人類にも原因がありますので、誠にすみません」
――病気ではないのですね。安心しました。教えてくれてありがとう。

気づくと元の場所に戻っていた。
俺が樹木医と知っていて、桜の花園に呼ばれたのだろうか。
ファンタジー
公開:20/03/22 06:33
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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