花薬

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散歩中、良い香りに誘われて寄り道。いかにも空き家って顔した古民家の垣根に、アジサイのミニチュアみたいな、薄いピンクの花。
何だっけこれ。ハナミズキ?コデマリ?違うのは判るけど正解が判らない。まぁいいや、甘酸っぱい様な、ほろっと切ない様な、女の子っぽい香り。すごい好みだな。人間だったら惚れてるな。あー気持ち良い……

――ぽてっ。
目の上に水が落っこちた。
雨……は、降ってない。露でも溜まってたか?ぐしぐし擦って起きる。他人様の家の前で、俺ってば居眠りしそうに――ぽて。ぽてっ。。うへ、冷てぇ。もしかして追い出し工作?
「ごめんごめん」
適当に謝っておいとま。小走りに離れると、多分近所のおばちゃん達が、こっち見てけらけら笑った。
「あーあ、花薬」
「唾つけられちゃって」
「ほら、薬(やく)払い」
わらわら寄って来て飴ちゃんをくれた。
懐かしのすもも味。食べながら歩く間に、花の香りが飛んでった。
ファンタジー
公開:20/03/23 20:57
散歩道で見た シーズン2-①花から鼻薬。 画像は沈丁花です。

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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