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「今日こそ最高点を取る!」
と、意気込むも消しゴムを忘れた事に気がついた。
「これ使う?」
隣の席の恵が貸してくれたのは砂消しだった。
「ありがとう…でもこれ使いづらいんだよなあ…紙破れるし」
「この砂消しは、文字通り砂で消すの」
恵の言葉の意味は、テストが始まるとすぐに分かった。間違えた字の上を擦ると、わら半紙と同じ色の砂が字を覆うのだ。使いやすくテストも調子よく進んだ。

返却された用紙には過去最高の点数が書かれていた。
「早速ママに知らせるぞ!」
放課後、急いで帰ろうとした時、恵が声をかけてきた。
「ごめん、こないだの砂消し、間違えておかしなの渡しちゃった。紙見せて」
そう言われて、机から用紙を出すと文字の上には何本もの木が生えていた。
「砂漠の砂の消しゴムなんだけど、それで覆ったら、たまにオアシスができるんだ」
木々の間から泉が溢れ、紙がビショ濡れになると、僕の目からも涙が溢れた。
ファンタジー
公開:20/03/23 14:20
更新:20/03/23 18:41

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