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人類が四百歳まで生きられる世になってから今日で四百年が経過した。
膨大な時間を得た人類はあらゆる科学を昇華させた。人は皆飢えず、究極の知識を享受した。

「昔は良かった」などと宣う耄碌した老人はいない。記憶できる年月を伸ばす研究は未完成だ。
子孫への執着は薄まったが、個人の保持する知識量はかつてとは比較し得ない。

四百歳人類の第一世代は、無限の如き人の生に辟易したが故の集団自死を行って社会問題となり、ある疑問を投げ掛けた。

ーー寿命はいつ来るのだ!

成る程、自死した彼らの寿命は四百歳だ。だが未だ生存する者達がいる。彼らは自然死を選択したが、「その時」を既に飽く程待ちわびている。

常闇の恐怖。彼らは必死に過去の知識を思い返した。確か、四百年前に科学者が発表していたのだ。

しかし、最新の知識は思い出せても四世紀前の事を思い出せる者はいない。記憶できる年月を伸ばす研究は未完成だ。
SF
公開:20/03/22 20:33

游人

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