続・聖地へ

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カッパドキアには得意の泳ぎでいくことにした。しかし彼は見落としていることがあった。新潟の小さな川と大海原では泳ぎ方が違うのだ。
まず第一に彼は海で泳いだことがなかった。大波にもまれ、サメにかじられ、かもめに突っつかれた。頭の皿では海水が干上がり、どんどん塩がたまっていった。

トルコの海岸沖に着いた時には、すっかり疲労困憊していた。陸が見えたとき、ふっと気が緩んでしまった。ぶくぶくぶく。体が沈み溺れそうになり、慌てて水上に飛び出した。

「キャー」

近くで子供の叫び声が聞こえた。見ると子供たちが慌てて岸の方に戻っていく。入れ違いに岸から大人がやってきた。

「君、ライフセーバーにならないか」

ライフセーバー?なんかカッコイイ。それに旅費が稼げそうだ。「やります」彼は即答した。

そうして、危険個所に潜り、子供たちが近づいてくると海から飛び出して脅かすというその仕事が、天職となった。
その他
公開:20/03/21 11:09

いづみ( 東京 )

文章を書くのが大好きです。

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