佐保姫と竜田姫

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むかしむかし、大和国(奈良県)に佐保姫と竜田姫という二人の姫君がいました。
染色と裁縫を得意とする二人はライバル関係で、美しい風景で競い合うことになりました。
まず春霞を纏った佐保姫は、都(平城京)の東に位置する佐保山を柔らかい薄ピンク色の桜で染めました。
次に秋霧を纏った竜田姫は、都の西に位置する竜田山を鮮やかな赤や黄など色とりどりの紅葉で染めました。
二人は、大和国の民にどちらが美しい風景か尋ねましたが、民は、どちらの風景もあまりにも美しかったため選ぶことができず、なかなか勝負がつきませんでした。
すると二人は、お互いのつくった対照的な風景を称え合って仲良くなりました。そして、佐保姫が春(東)の女神に、竜田姫が秋(西)の女神となりました。
その後、夏(南)の女神となった筒姫、冬(北)の女神となった宇津田姫も加わって、四人で彩り豊かな日本の四季を司ったということです。めでたしめでたし。
その他
公開:20/03/21 05:47
大和国 佐保姫 竜田姫 春霞 平城京 佐保山 秋霧 竜田山 紅葉

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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