実話ー辻井伸行

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息子が、日本人で初めてバン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝した。私は周りの人達からお祝いを述べられた時、昔を思い出していた。

医師である夫と結婚し、息子も産まれ幸せを感じていた私に、医師は息子が全盲だと告げた。

ーこの子はこんなハンディを持って生きていて幸せなんでだろうか。

真っ暗な世界で生きているこの子。よき未来を考えれず、私は辛い毎日を送っていた。

ーでも今は違う。ただ目が見えない個性を持ってるだけ。

彼のいい部分があったらそれを伸ばしてあげるだけと信じて子育てするしかなかったけど、これでよかったんだなぁと、ピアノを弾き終えた息子を見つめた。

「お母さん」
「うん、何?」
「僕、目が見えなくてもいいんだ。幸せだよ。でも一度だけ目が見えたら、お母さんの顔を見たいな」

息子が、照れながらそう言った。
心が熱くなり涙が溢れた。息子の姿がにじんでよく見えなくなった。
その他
公開:20/03/21 23:36
更新:20/03/22 20:47
辻井伸行 盲目のピアニスト

叶こよ( 海外、エブリスタ )

叶こよ(かのうこよ)と申します。
2020年2月25日からここで書いてます。

なかなか素敵な文章表現ができなく、日本語の難しさを感じながら書いてます。
こちらで短編を書きながら、いろいろ学びたいと思います。
よろしければいろいろアドバイスをいただければ、とても力になります。
よろしくお願いします。

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