脳内洗浄クリニック

マルちゃんはクリニックが好きだ。最近は変わったところに行ったらしい。やはり女医さんだ。
「ここにアゴをのせてください」
台座の器具にアゴをのせると、いきなり大きなヘッドフォンみたいなもので挟まれて、頭部が動かせない。
「始めます」頭の中が微振動した。
「終わりました」
マルちゃんの一週間分の脳内洗浄だ。

魅力的な女医さんの説明はこうだ。
「人には嫌な出来事があります。忘却という力で消すのが脳の力ですが、現代社会では嫌な情報が増えて毒素になります。毒素情報のみを定期的に洗浄することでより快適な情報生活が送れます」
マルちゃんは毎週通っている。
「それで効果は？」
「洗浄後の一週間、爽やかな感じだ。でもなんだか忘れっぽくなったような気がするんだ。女医さんに言ったら、次から削除情報を戻すメニューになった」
「それで？」
「もう、忘れっぽいことはない。でもなんだか頭が重い。気のせいかなあ」