時計のつぶやき

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『ほら、あの人フリーになったぞ。話しかけてこい』
「む…無理だよ…」
『何が無理なんだ。早く行けって!…あ~あ、話しかけられた…何やってんだよ…』
僕の腕時計がわざとらしく溜息を吐く。こいつは世にも不思議な喋る時計だ。
しかも喋るだけじゃなくておせっかい焼きでもある。いつまでたっても彼女の出来ない僕を見かねて、パーティ形式の合コンに申し込んだ。
ここまで御膳立てして貰っているにもかかわらず僕は何も出来ないでいる。さっきから時計の呟きがチクチクと僕に突き刺さる。
「面白い時計ですね」
女性が話しかけてきた。驚いた僕はしどろもどろになりながらも何とか受け答えをする。
女性はそれにくすくすと笑いながらも僕の話をちゃんと聞いてくれた。
ああ、何でこんな時に限って時計は何も喋ってくれないんだ。
『時を忘れて会話を楽しめただろ?ほら、連絡先聞いておけ』
時計の後押しを受けて、僕の恋は一歩前進した。
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公開:20/03/18 18:42

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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