身代わり人形

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 男はある日、骨董市で人形を買った。
 精巧に作られた妙に生々しい人形だった。ちょうどその頃、男はホラー小説を執筆しており、この人形から何か特別なイマジネーションを得られるような気がした。
 家に帰って人形を机の上に置くと、男はさっそく執筆にとりかかった。その日は筆が進み、上機嫌になった。これも人形のおかげか。
 翌日もすぐに執筆を始めたが、ふと買い物の用事を思い出した。「では私が代わりに行きましょう」と、突然に人形が言葉を話した。男は驚いたが、人形に金を渡してみると、すぐさま男そっくりな姿に変化して、本当に買い物を済ませてきた。男は味を占めて、雑用をすべて人形に頼むようになった。
 ある日、男は恋人と喧嘩別れをした。すると人形が彼の身代わりになり、恋人と結婚してくれた。スランプに陥ると、小説も書いてくれた。
 日々は過ぎ、男はふと鏡の中の自分が無機質な人形の姿になっていることに気づいた。
ホラー
公開:20/03/20 11:34
人形

水素カフェ( 東京 )

 

最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。

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