ハート・デリバリー

「これ、送れますか？」
長年宅配業やってりゃ、妙な依頼もある。
「送れますよ。箱に詰めて伝票貼ってもらえれば」
「お願いします。ココロが込もってるんです」
見て解るよ。どういうココロかは知りたかないが。
「ナマモノでいいですか？ウチは『生物』不可なんで」
「大丈夫です。もう生きてませんから」
流行りのリベンジデリバリーか。結局痛い目に遭うのはあんただろうに、女ってのは怖いね。
「クール便はどうします？冷蔵か、冷凍か」
ドリップ出てるし、臭うな。こういうの、俺は慣れてるけどね。
「結構です。常温で届けて下さい」
「では、伝票記入と、別途有料で箱も……」
「持ってきてます」
――あれ？この箱って……。
「焼肉用の牛ココロ、今朝届いたら腐ってて。どうぞこのまま、おたくの本社に送って下さい。よろしく」

おっと。珍しく『生』のお客だったか。
俺らと同じゾンビだと思ったのに。牛のせいで喰いそびれた。