忘れる・忘れず・忘れる

2
3

医療の進歩によりアルツハイマー病の特効薬が開発された今、それは物忘れにも使えると多くの人が服用した。
これにより人々は「忘れる」という悪癖を消し去った。
誰もが物忘れのない世界に喜んだが、それは間違いだった。
人は忘れる事で辛い現実から目を背け、脳を、己を守る生き物だ。
その術を失い、誰もが「忘れる」という悪癖を求めた。

「物忘れの薬はまだ完成せんのか!?」
金持ちが怒鳴ると研究者は答える。
「何を仰いますか。先程飲まれたではないですか?お忘れですか?」
その言葉に金持ちは喜び、研究者は嘘にほくそ笑む。

だがそれももう終わりだ。私は正真正銘の忘れ薬を開発した。
今よりこれを世界中にばら撒く。忘れるという幸福に皆で浸ろうではないか!
私がスイッチを押すと薬の入ったミサイルは空高く飛んで行った。

1年後
全てを忘れた人類は生まれたままの姿で動物と同様に本能のまま、幸せそうに暮らしていた。
SF
公開:20/03/16 19:21

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容