異界のパスポート

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普段から極度な怖がりで、暗闇や墓地などが大の苦手。家族にも馬鹿にされる程だ。

いつも趣味の散歩で通る、お寺の横の小さな墓地も、目をそらしている。
でもある日、墓地の外れの小さな墓石が気になった。

寺の掃除のせいか、小綺麗だが、一度も花や供物を見かけた事がない。
何だか可哀想で、持参した水筒の水を石にかけ、手を合せた。

すると墓の陰から、一人の男が出てきた。「ご供養、有難うございます」
私はギョッとした。これは人間か、はたまた物の怪か?

そいつは言う。
「これからもそのお心、お願いします、旦那」
そして小さな木ぎれを私にくれた。
「これは異界・年間パスです」
「異界?」
「はい。お代は時々の供養とかで結構です。特典もあり、払う恐怖は三割引きになります、旦那」

それ以来。暗闇や墓地がさほど怖くない。
年間パスの「恐怖の割引」は、効果てきめんだ。

たまに、物の怪が見えたりするけれど。
ファンタジー
公開:20/03/15 12:52
更新:20/03/15 21:50

tamaonion( 千葉 )

雑貨関連の仕事をしています。こだわりの生活雑貨、インテリア小物やおもしろステーショナリー、和めるガラクタなどが好きです。

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