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 俺は、今追われている。

 頭から二本の角が生え、口からは鋭い牙が飛び出し、全身の皮膚は返り血を浴びたかの様に赤い、異様な生物に。

 家族や警察に助けを求めたが、どうやら奴は俺以外の人間には、見えていないらしい。俺は、どうにか身を隠そうと、人気の無い路地裏へと逃げ込んだ。

「ガバババババ!」

 しかし、確実に近づいてくるその鳴き声に、逃げる気力も体力も失った俺は、座り込んだままゆっくりと目を瞑り観念した。

 そして……。

 ポン。

 と、右肩に軽く手を置かれた感覚があった後、ゆっくりと目を開けると、そこには見知らぬオヤジが立っていた。

「自分の事を見える人間にしかタッチ出来ねえから気を付けなよ。あっ、タッチ返しは無しだから」

 見知らぬオヤジは、そう言い残すとその場を去っていった。頭が混乱して何がなんだかわからないが……助かった……俺は助かったんだ。

「ガバババババ!」
その他
公開:20/03/29 20:00
更新:20/03/29 20:21

恋するメンチカツ( 兵庫県 )

多くは語らぬ世の情け、見て感じ取り、考えよ!
次世代喜劇の執筆家、恋するメンチはカツの味!
恋メン劇場いざ、開演!!

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