信頼

ーいいよな。才能があって
営業成績ナンバー1のA君をとてもうらやましく思った。
俺の営業成績はというと、そんなに良くない。順位は下の方だ。
A君に比べると、ルックスもよくなく、口下手であるのに、なぜこんな俺を会社は営業課に配置したんだろう。
ー才能がない奴は努力するしかないか。
そう思いセールス上手な上司に教えを乞い、がんばった。しかし順位はあがったものの、中間くらいであった。
「君が今年の1番だったね」
「え?」
上司が、俺が「営業1番だ」と言った。
「君は契約キャンセルがほとんどなく、キャンセル率が一番低いので1番だったじゃないか。いいかえれば、顧客から1番信頼を勝ち取っている営業マンだね。営業は物を売るというより、いかに信頼を得るかが大事だと思うよ」

あれから7年経った。Aくんは2年で会社をやめた。俺はその後、顧客の信頼を得ることをより重視し、課でトップの座を維持し続けている。