それは嘘のような雪の夜に

恋愛、青春、老い、死
いつかめぐる順番を待つ間
誰かを追いかけたり
語り合ったり求めあったり
同時進行する幾つかの人生が
不意に横並びになって
色んな列車が行き交う踏切のない線路のように
一瞬のカラフルが愛おしい

思い出の話をした
幸せの話をした
老いてすべてを忘れても
積み重ねた素敵な年月が
君に幸せな最期をもたらすように、と

恋愛の話をした
夢の話をした
立ち読みした本のように
断片的な記憶を積み重ねた
君の最期が幸せなものであるように、と

それは嘘みたいな雪のあとで
この街に珍しく
雪が積もった朝に
君は生きることが喜びに代わるだろう
僕は死んでも楽にはなれないのだろう

それは嘘のような雪の夜に
この街に珍しく
雪が舞う夜に
君は僕を思い出にしていつか忘れるだろう
僕は君の思い出だけをずっと忘れないだろう
夢を見ていたような
雪の夜のあとで