白南風
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雨上がりの夕暮れ、僕は日課のランニングに出かけた。しっとりと柔らかな風を頬に感じる。
石造りの階段をかけ上がり、川沿いの堤防に出た所で、僕はふと足を止めた。河川敷で見覚えのある女性が絵を描いていたからだ。無名の声優だった彼女は、病気で声帯を失った。しかし、彼女は表現者で在ることを選び、筆を手にしたのだった。
真剣な表情で描き続ける彼女を見て、僕は陸上に打ち込んだ高校時代を思い出した。
目立った賞歴もなかったが、他に取り柄もない僕はがむしゃらに走り続けた。そうして高校三年の秋、左足の靭帯を損傷し、呆気なく引退した。
しかし、思い返してみれば僕には特別な才能は無かった。ただ、それを認めるのが怖かったのだ。
「そろそろ潮時かな」
きっかけなど、些細なものだ。何時までも未練がましくすがり付くには人生は長すぎる。
彼女の熱い眼差しに当てられて、僕は新しい日課を探そうと心に決めた。
石造りの階段をかけ上がり、川沿いの堤防に出た所で、僕はふと足を止めた。河川敷で見覚えのある女性が絵を描いていたからだ。無名の声優だった彼女は、病気で声帯を失った。しかし、彼女は表現者で在ることを選び、筆を手にしたのだった。
真剣な表情で描き続ける彼女を見て、僕は陸上に打ち込んだ高校時代を思い出した。
目立った賞歴もなかったが、他に取り柄もない僕はがむしゃらに走り続けた。そうして高校三年の秋、左足の靭帯を損傷し、呆気なく引退した。
しかし、思い返してみれば僕には特別な才能は無かった。ただ、それを認めるのが怖かったのだ。
「そろそろ潮時かな」
きっかけなど、些細なものだ。何時までも未練がましくすがり付くには人生は長すぎる。
彼女の熱い眼差しに当てられて、僕は新しい日課を探そうと心に決めた。
青春
公開:20/03/15 17:54
更新:20/03/15 18:39
更新:20/03/15 18:39
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