スキマ

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 男は最近、視線を感じていた。
 一人暮らしの部屋にいる時も道を歩いている時も、大学で授業を受けている時にも、背中がむず痒いような気がするのだ。
 
 今日も、大学へいくために道を歩いていると、視線を感じた。
 男が右を向くと、家の塀と塀の間に、細い隙間があった。猫も通れないような隙間。昼間なのに、隙間の中は不自然なくらいに暗かった。視線は、その隙間から注がれているような気がしたが、覗き込む勇気はなく、男はそのまま大学へ向かった。

 ーーどうも視線は、隙間から注がれているらしい。
 家具と壁の間、講義室の少しだけ開いた扉、食堂の上に設置されたエアコンの送風口など、ありとあらゆる隙間から、誰かに見られている気がした。男は極力、隙間には近づかないことに決めた。
 
 翌朝、男は洗面台へ向かい、顔を洗う。
 顔を上げると、目の前には鏡。
 ーー男の唇の隙間からは、二つの目玉が覗いていた。
ホラー
公開:20/03/15 18:00

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