街雨

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 時々、街が降ってくることがある。
 ビルや車や人が、空から雨のように降ってくる。それは次元を隔て、崩壊した世界のもので、この世界にはないものだ。
 今も、私の目の前で街が降ってきている。雲を引き裂いて、巨大なビルが捻じ切れたように落ちてくる。根元は向こうの世界に置いてきたのだろう。鉄骨や割れたガラスの破片も米粒みたいな大きさで、一緒に降ってくる。
 ビルは海に衝突すると、大きな水しぶきをあげた。轟音は数秒遅れて届いた。海全体が揺れているようだ。潮の匂いが強くなって、私は慌てて海岸から離れようとしたけれど、間に合わなかった。
 私は海に呑まれた。
 
 気づけば、空にいた。
 遥か下に街があった。
 空の色は青ではなくて、白かった。海は赤色だった。
 そこは、隣の世界だった。

 どうやら、私の世界も崩壊したらしかった。
 
SF
公開:20/03/13 14:20

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