文学バー

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今日も会社帰りに立ち寄る。店の名はLibrary。マスター特製のブックカクテルが売りだ。日本文学から海外文学まで、文学作品のメニューが揃っている。
「何がいいかな」
「軽く『一握の砂』から十首などは?」
「いいね」
透明なショートカクテル。口をつけると啄木の短歌が染み入る。朗読ではない。脳内に言葉が流れる感じ。飲むうちに作品世界に浸る。浸るのはしばらくの間。酔いが醒めると忘れてしまう。一晩だけの読書体験。分冊ものは一気に飲むのがおすすめだ。
続いて漱石「夢十夜」。マスターは二杯に分けて作る。
まず第五夜まで。ロンググラスの底からぷつぷつと泡が昇る。「こんな夢を見た」と脳内で夢の世界が広がる。時間をかけて飲み干す。続けて二杯目。第六夜から第十夜までをじっくりと堪能する。
お、こんな時間。終電に間に合わない。朝まで飲むか。店は一晩中やっている。
「マスター、次は『カラマーゾフの兄弟』」
その他
公開:20/03/13 06:47

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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