時計のつぶやき

ペットは飼い主に似るというが、実は持ち物も所有者に似てくるんだ。
使い慣れた道具は、使い手の手に馴染むよう癖がつく、なんて言われるだろ？あれと同じさ。
驚くべき事だが腕時計の俺も今、昔の所有者によく似ている。
俺の昔の所有者は腕利きのスナイパーでね。狙った獲物は絶対に外さない百発百中とまで言われていた。
特にヘッドショット。頭を撃ち抜く事にかけては右に出る者がいなかった。
褒められた職業ではないが、俺はこの人の事を尊敬していた。

で、今の俺の所有者だ。
見た目は子供だが度胸は大人顔負け。いいや、度胸だけじゃない。頭脳だって相当なものだ。
幾多の困難を乗り越え、数々の難事件を解き明かす。
まあ、その見た目から侮られる事も多い。そこで俺の出番だ。
実は俺には麻酔針が飛び出す仕込みをされている。
こいつを『名探偵』なんて呼ばれているおっさんの首筋に打ち込むと…ほら、ここからは推理の時間だ。