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「蛍には触らないで」

 キャンプ場の主人にそう言われ、差し出された薪を受け取った。
 私は中学生の息子と二人でキャンプに来ていた。妻と別れて三年。仕事にかまけてろくに息子と会話ができてないと思った私は、意を決して旅行を提案したのだ。

「火、つかないな」

 薪は最近資金を集め、このキャンプ場で独自に開発されたものらしいが……

「ついた…え!」

 薪に火が移ると、炎がパチッと弾けた。驚いたのはその後。飛んだ火の粉は消えることなく宙を浮遊し始めた。

「蛍?」

 火の粉は羽を伸ばし空を舞った。炎がはぜる度、次々と蛍が生まれた。

「すごい」

 夜空を赤く彩る無数の蛍に息子は感嘆の声をあげた。

 一匹の蛍が息子が持つマシュマロにとまった。蛍はジリジリとマシュマロを焦がし、ぼっと火をつけた。私は驚き、黒ずみとなったマシュマロを見て、息子と声を出して笑った。

「いや、笑えんよ!」
その他
公開:20/03/11 23:58
更新:20/03/12 09:06
スクー 投資蛍

イチフジ( 地球 )

マイペースに書いてきます。
感想いただけると嬉しいです。

100 サクラ

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