2
3

ある所に熊と言う名の男がいた。
この男、腕の良い漁師なのだが、めっぽう酒に弱い。
今だって酒を浴びるほど飲んで千鳥足で家に向かっているところだ。
その帰り道、熊は浜辺で赤ん坊を拾った。
「おい、見てくれよ。浜辺でこんなものを拾ったんだ」
熊は妻の亀子に事の一部始終を話した。
「それでこれからどうするつもりだい」
「そんなの決まっているだろ。この子を大金持ちの旦那に売って大儲けするのさ。そうと決まったら今日は宴会だ。景気づけに酒をじゃんじゃんだしておくれ」
「はいはい、わかったよ」

「おい、亀子。昨日、俺が浜辺で拾ったあの子はどうしたんだい?」
「何の事だい。あんたは昨日、帰って来るなり「酒を出せ、じゃんじゃん出せ」と散々、戯言を言った後、寝てしまったじゃないか」
「それじゃ、あれは夢だったと言うのか」
「ええ、きっとそうですよ。仕事もせずに酒ばかり飲んでいるからそんな夢を見るのよ」
公開:20/03/11 22:58

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容