夜の街の灯

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ロックグラスを置くと、彼は胸ポケットから紙巻き煙草を取り出した。小気味良い金属音を奏でたオイルライターの火に、煙草の先端を近付ける。彼はゆったりと煙を吸い込んでいった。

「今更旧式の紙巻きタバコなんて、って顔をしているね」

とっさに返事ができなかった私は、暫し口を開閉させたあと、彼から視線を逸らせた。涙目になりそうなのを堪えて、目の前のショートグラスに入ったカクテルを一息に飲み干した。

「僕の番は明日だ、気付いていたかもしれないけどね」

二回の大戦の後、一世紀の間保たれた平和は脆くも崩れ去った。三次大戦は消耗戦となり、敵国でゲリラ的自爆攻撃をするまでに状況は逼迫していた。

ーー街を見下ろせるバーに連れて来たのも、私の為にやめていた煙草をまた吸っているのも。

「僕は君のために死ぬよ。来世で必ず、君のために生きるよ」

気障な別れ話をする為なんて、私は気付きたくなかったのに。
SF
公開:20/03/11 19:33
更新:20/03/11 19:55

游人

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