昔の親孝行

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友が「日本橋の老舗百貨店で、特売やってるよ」と言った。「あんな高級店で?」、「地階だよ、紳士物もあるよ」。
オーバーが欲しかったので早速行ったが、目立たない所に山積みされ、文字通り掘り出しオーバーを探しだした。地味かなとも思ったが、百貨店の商標付だし魅力的だ。
帰省時に、早速親父が気付き「良いオーバー着てるじゃないか」、「バイトで稼ぎ手に入れた」と自慢気に商標を見せた。
「頑張ってるな、一度着せろ」と勝手に着た。
体格が似てて違和感もなく、地味だったのが親父にピッタリだと密かに思った。休みも終わり上京時、照れ臭かったが「このオーバーあげるよ」と言うと「お前が買ったオーバーだ、大事にしな」と言ったが「もう少し若者向きのを欲しいから、いいんだ」と押し付けた形で帰った。
後日親戚から「これ息子が呉れたオーバーだ」と、自慢気に着ていたと聞いいた時、初めてささやかな親孝行が出来たかなと嬉しかった。
青春
公開:20/03/12 20:52
更新:20/04/09 15:15

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