時計のつぶやき

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陸上、短距離走。
私は今日も0.1秒の壁を打ち破るべく走る。
天気は晴れ。体にまとわりつく湿気はない。
風は追い風。私を遮る向かい風は吹いていない。
ぱぁん!と間延びしたピストルの発破音を最後まで聞かず、私は駆け出した。
100m。時間にしてたった10秒足らずの短い時間が私にとってはとても長く感じる。
少しでも早く足を前に。より速く走る為に体をより軽く。
私の体は短距離に特化していた。
それもこれも0.1秒の壁を破るためだ。
ゴールラインを越える。ストップウォッチを持った仲間を睨みつける。
ここまで御膳立てして貰って尚、私はまた、0.1秒の壁を破る事が出来なかった。
『またダメだったな』
ストップウォッチからそんな声が聞こえた気がした。
全く持って憎々しい。
だが見てろよ。明日こそは0.1秒の壁を越えてやる。
その時は私に向かって『よくやったな』と言ってくれ。
頼むよ、親友。
青春
公開:20/03/12 19:04

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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