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僕は天使を捜していた。
世界はひどく汚れていて、天使なんているはずがないと思って生きてきた。でも誰かが僕の眼鏡を拭いてくれて、それから世界はとても美しく見えるようになった。
誰が眼鏡を拭いてくれたのだろう。僕は天上に向かうエレベーターの中で移りゆく景色にうろたえていた。こんなに素晴らしい世界に生きていることをどうして今まで見過ごしてきたのか。
「恋をしたんだね」
エレベーターが言った。
「僕は恋などしていないよ。誰かが眼鏡を拭いてくれただけ」
「天使のやつ」
エレベーターはそうつぶやいて、僕を天上で降ろした。
カッペリーニは天使の髪。天使の羽根と呼ばれるランドセルや、天使のブラジャーなんてのもある。
天上庭園にはパスタ髪をなびかせたランドセルにブラジャー姿のおじさんがいて、僕は恐ろしくて、閉まりかけたエレベーターに飛び乗り、病院のベッドで意識を取り戻した。
僕はもう天使を捜したりしない。
公開:20/03/12 12:39
更新:20/03/12 13:00

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