おまもり

この島の住人は皆、張子の虎と赤べこをお守りに持っている。変わった風習だ。
聞けばここは昔、鬼ヶ島と呼ばれていたらしい。
体が大きな男達が働き、仕事終わりには酒を飲んで騒ぐ島だった。
だが昔は体が大きいだけで奇異の目を向けられた。当時の帝は部下に命じ、船を沈め男達を島に閉じ込めた。
幸い、ここには豊富な資源がある。男達は気にせず働いたが困ったのは都だ。島からの資源が届かず商いが成り立たなくなってきた。
そこで帝の部下は夜な夜な資源を盗みに島に来たという。中でも桃太郎って盗賊が悪逆非道で平然と人殺しも行ったと聞く。
そんな桃太郎一味に殺された男達の霊が鬼となり、よそ者を襲うようになった。
以来、島の住人は皆、自分は鬼の仲間だと牛と虎のお守りを持つようになった…成程。
話を聞いてバカバカしいと一蹴するのは簡単だ。
しかし先程から殺気を感じている私は張子の虎と赤べこがないと不安でたまらなかった。