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「あとはこのボタンを押せば……」
男は汗を拭ってそう言った。
「私をクビにしたあの部長の会社ごと、木っ端微塵にしてやる」
一方……。
「キミ、なぜあの男をクビにしたんだね」
「それは……」
「言いにくいことかね」
「……はい」
「だったら、無理にはきかない。仕事のできるなかなかハンサムな男だったがね」
そういって、上司は去っていった。
私のデスクには、夫の写真が飾られている。
「こんなこと……でも、やっぱり……」
私は電話をかけた。
「もしもし」
男の声がする。
「あなたに、黙っていたことがあるの」
「……」
男は怒っているのか、なにもいわない。
「私、あなたを愛してしまったの」
「……え」
「だから、クビにしたの。だって、私には夫がいるもの……」
「そんな……」
「私、どうしたらいいか……」
そこで、電話は切れた。
男は押されたボタンを、ただ見つめるしかなかった。
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公開:20/03/10 16:12
更新:20/03/11 17:00

ふじのん

歓びは朝とともにやってくる。

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