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「結婚しよう」
男は指輪を差し出した。
女は「はい」と嬉しそうに返事をし、それを受け取った。
「あれ?」
女は異変に気づく。
「これ、宝石がついていないけど……」
確かに宝石がついていない結婚指輪などたくさんある。
しかし、男は大企業の社長。
当然大きな宝石の指輪を贈ってくれるものと女は思い込んでいた。
「実はね、指輪の原料は蛍なんだ。世界にも数個しかない貴重なもの。指につけると美しい光を放つんだ。不満だったかな?」
女は首を横に振った。
良かった。安物というわけではなかったのね。
女は心のなかで思う。
「早速つけてみてよ」
女は指輪を左手の薬指につけた。
が、なんの変化もない。
「光るはずじゃないの?」
男はそれを見てがっかりした様子で言った。
「この指輪はきれいな心の持ち主がつけることではじめて輝くんだ。やっぱり君は金目当てだったんだね……」
その他
公開:20/03/10 14:32
更新:20/03/24 22:26

田坂惇一

ショートショートに魅入られて自分でも書いてみようと挑戦しています。
悪口でもちょっとした感想でも、コメントいただけると嬉しいです。

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