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「どうしてマフラーしてこなかったの」
晴仁が言う。私も困っていた。晴仁からもらった赤いマフラー。つけてこようと思ったのに、デートの時間に間に合わないかもしれないと焦り、結果忘れてしまった。
「ごめん、ちょっと出先にバタバタしちゃって」
「せっかくプレゼントしたのに。美桜は僕が大切じゃないんだ。僕はこんなに美桜が好きなのに」
完全に拗ねている。
「美桜の綺麗なうなじ、他の男に見られたくない」
晴仁はそう言って私の首筋に手を伸ばした。私はそれをかわすと、晴仁のマフラーを無理やり引き抜いた。
「じゃ、これ貸して」
「寒い」と彼は抗議の言葉を口にしたけど、言葉とは裏腹に少し嬉しそうだった。

危なかった。
マフラーをホテルに忘れてきたのは本当にまずかった。あの人のキスマークが首筋に残っているから。
今度から時間ギリギリまでホテルにいるのはやめよう。どちらも遊びだけれど、新しい男探すのも面倒だしね。
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公開:20/03/11 13:44
更新:20/03/11 14:35

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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