名画鑑賞

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「おや、こんにちは。昨日はどうも」
人気のない街を歩いていると、すれ違った男に声をかけられた。…誰だっけ?
「お忘れですか?昨日お会いしたばかりですよ。ほら、美術館で」
美術館?
確かに昨日私は美術館に行ったが、街中同様、館内は閑散としていた。誰とも話した記憶はない。
「嫌だなあ。あなたずっと私の前で立ってたでしょう?」
言われて思い出した。まさか…。
「だってあなた…絵でしょう?『黒い帽子の男』」
男はにやりと笑った。
「ご名答!実は巷の騒ぎですっかり美術館も暇でね。いっそ市内見物でも行くかと。では失礼。どうぞお気をつけて」
男は帽子の向きを直すと、角を曲がって消えてしまった。

翌日私はもう一度美術館に足を運んだ。
彼はちゃんとそこにいた。
『黒い帽子の男』として。
だが近づいてみると何かが違う。暫く眺めてはっと気づいた。
斜めを向いた彼の端正な顔を、白いマスクがきっちりと覆っていた。
その他
公開:20/03/11 16:00
更新:21/08/26 11:19
名画 美術館 自粛

秋田柴子

2019年11月より、SSGの庭師となりました。
現在SSから長編まで幅広く書いております。

【活動歴】
・東京新聞300文字小説 優秀賞1回 入選2回
・SSG 空想競技コンテスト 入賞
・『第二回日本おいしい小説大賞』最終候補(小学館)
・SSマガジン『ベリショーズ vol.5,6,7,light』掲載(Kindle無料配信中)
https://www.amazon.co.jp/dp/B096821HSW

【近況】
 いろいろ書いてます(笑)

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