失った左腕

4
4

僕は煙草の火を揉み消した。

「君はそんなつまらない話をする為に、わざわざ訪ねてきたのかい?」

目の前の少女は体を強ばらせ、大きな丸い眼には、溢れんばかりの涙を溜めていた。
彼女が外した手袋の下には、鉛色の義手が鈍い光を放っている。

震える肩にそっと手を置く。やはり……、間接があるべき場所には、拳大の鉄球があり、金属の冷たさが薄いブラウスの生地を通して伝わってきた。左腕は全て義腕になっているようだ。

「君が復讐をするためにどんな体になろうと知ったこっちゃないさ。ただ、死ぬ理由を僕に求めないでくれ」

僕は、彼女から手を離し、もう一度ソファーに腰を落ち着けた。

「ここで傭兵として働く為に、失った左腕を改造したその意気込みは認めるよ。ただ、君はあまりにも……」

彼女は何も言わずに手袋をつけ直した。

「死ぬ覚悟が強すぎる」

去り際の彼女の背に、僕は呟くのだった。
SF
公開:20/03/09 07:00

游人

感想やご意見をいただけましたら幸いです。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容