満ちる

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「お疲れ様ー!」の合図で生ビールのジョッキをガツッと当てた。揺れる泡は空に浮かぶ壮麗な入道雲のようで、その下に広がる魔法の海のような黄金の輝きを、ゆっくりと味わいながら疲れた体に注いでいく。生ビールが喉を過ぎるたび、今日までに起こった全ての苦難を忘れられた。
この世には数知れない美味しいお酒があって、季節によって、料理によって、色々なお酒を飲むたびに、この世にはこんなに美味しいお酒があるものかと感動してやまないが、飲んだ瞬間、「生きててよかった…」と心の底から思うのは、ジョッキで飲むきんきんに冷えた生ビールだけだ。
ゴク ゴク ング
一度にジョッキの半分を飲んで、目をぎゅっと瞑って息をくぅっと出し切ると、俺はそのままもう半分に挑む。
ゴク ゴク ゴク ゴク
ジョッキを干すにつれ、俺の体は月曜夜の背徳感と幸福感で満たされていく。
…ゴク!
ついにジョッキが空になると、時は満ちた。
ゲエップ!
青春
公開:20/03/09 19:11
※渾身の演技で 月の文学館

10101298

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