服と老人

　服はお好きですか？　コンビニの前でタバコを吸っていると、老人が僕にそう声を掛けた。僕が老人に目を向けると、視線がぶつかった。ずいぶんお痩せになっている、と老人は僕に向かって言った。僕は自分を隠すように、ええ、まぁ、とだけ答えた。私も昔はタバコを吸っていましたが、今は医者に止められているもんで、と老人は笑いながらそう言った。綺麗な歯並びが目についた。僕が黙っていると、老人は初めに言ったことをもう一度言った。服はお好きですか？　と。僕は、嫌いじゃないです、と答えた。僕は、この老人との会話をあるいは楽しんでいるのかもしれない、と思った。明日、同じ時間にここで服をお渡しします、受け取ってくれますか？　と老人は言った。僕は、レザーですか？　と聞いた。いいえ、綿のシャツです、と老人は答え、では明日、と言って、歩き出した。老人はグレーのリュックを背負っていて、僕にはそれが滑稽に見えた。