時計のつぶやき

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俺は時計である。
生前、人の成果を奪い他人の力で出世を重ねた俺は死後、地獄に落ち、徒刑と呼ばれる延々と無休で歩かされる罰を言い渡された。
太陽光電池内蔵で壊れるまで動き続ける時計は地獄の日々だ。俺の足は秒身となり、一秒に一歩ずつ24時間休む事なく歩き続ける。
時計の外を見た。ガキが机に向かって一所懸命勉強している。小学校の宿題。当たり前だが俺には簡単すぎる問題。
だがそのガキと来たら要領が悪く、何度も間違っては首を傾げている。
馬鹿な奴だ。お前みたいなガキは一生搾取されて生きていくんだよ。
俺は暇潰しにガキの観察を始めた。それはいつしか見守りに変わっていた。その子の成長が俺の楽しみになっていた。毎日「頑張れ」と呟いては聞こえるはずのないエールを送る。
その時になって俺は己の罪を理解した。

刑期を終え、生まれ変わった俺は驚く事にその子の親になっていた。
今度は親として誇れる生き方をしよう。
公開:20/03/09 18:53

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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