残り物
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「こんばんは!」
今日もまた、彼女が来店した。いつもの様に仕事帰りらしく、閉店時間まであと5分を切った所だった。 よほど急いだのだろう、赤みを差した頬を撫でながら彼女は息を整えていた。
「いらっしゃいませ。本日の売れ残りはこちらですが……」
モンブランが2つ、ショーケースに取り残されていた。
「やった、今日はラッキーね。2つ共くださいな」
「モンブランお好きでしたよね。ありがとうございます」
満面の笑みでモンブランを受け取った彼女は、何度も手を振りながら店を出ていった。
近頃続く閉店間際の来客、その後に訪れる静寂が心地良い。その事に気付くまで、そう時間はかからなかった。
彼女がモンブランを頬張る姿を想像すると、自然と頬が緩む。僕はシロップ漬けの栗が入ったビンを片付けると、閉店作業に取りかかった。
「残り物、福がありますかね」
残り物は、実は僕だけだったのだ。
今日もまた、彼女が来店した。いつもの様に仕事帰りらしく、閉店時間まであと5分を切った所だった。 よほど急いだのだろう、赤みを差した頬を撫でながら彼女は息を整えていた。
「いらっしゃいませ。本日の売れ残りはこちらですが……」
モンブランが2つ、ショーケースに取り残されていた。
「やった、今日はラッキーね。2つ共くださいな」
「モンブランお好きでしたよね。ありがとうございます」
満面の笑みでモンブランを受け取った彼女は、何度も手を振りながら店を出ていった。
近頃続く閉店間際の来客、その後に訪れる静寂が心地良い。その事に気付くまで、そう時間はかからなかった。
彼女がモンブランを頬張る姿を想像すると、自然と頬が緩む。僕はシロップ漬けの栗が入ったビンを片付けると、閉店作業に取りかかった。
「残り物、福がありますかね」
残り物は、実は僕だけだったのだ。
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公開:20/03/09 17:50
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