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僕は今日、生まれ育った島を出る。小中一貫の学校を卒業し、島の外の高校へと進学する。正直、寂しい。
だって今日僕が卒業してしまったらこの学校はもう廃校になってしまう。僕がこの学校最後の卒業生。そして、たった一人の生徒だった。
「島の外に行けば同年代の友達だってたくさんいるよ」「こんなジジババばかりの島じゃなくて、若い子達と都会で遊んできな」
そう笑う近所の人達の目には涙が浮かんでいる。寂しいのは僕だけじゃないんだ。僕は絶対に忘れない。この島の潮騒を。土の香りを。皆の温かさを。
卒業式を終え、体育館を出ると近所の人達と大勢の雪だるまが僕を迎えてくれた。
「どうだい!皆で急いで作ったんだ!」
隣に住むおじさんが鼻を赤くして笑った。総人口数十名の小さな島だけど沢山の祝福をその身に受ける。その暖かさに涙した。
春に降る雪がこんなに暖かいなんて思わなかった。僕はこの雪降る卒業式を絶対に忘れない。
公開:20/03/08 19:00

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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