桜雪前線

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日本では千年に一度、桜が開花する直前に桜雪前線が現れる。
梅雨前線がとどまれば、五月から七月にかけて長期間しとしとと雨を降らせるが、桜雪前線の場合、三月中頃に桜色の粉雪が数日間ほど舞い散る。この雪が降り積もると白銀ならぬ桜銀で大地が桜色に覆われる。
実は、花冷えや花吹雪、季節外れの名残雪の由来になっているのも桜雪前線という説がある。
藤原道長・頼通親子が栄華を誇った千年前の平安時代中期に桜雪前線が現れたとき、京の貴族が、その光景を和歌や漢詩に詠み、「風流」や「雅(みやび)」と書いている。
また、賀茂忠行や安倍晴明の血筋が頭を務めていた役所である陰陽寮では、桜雪前線を時代の節目となる天文現象と認定し、一〇二一年に元号を寛仁から治安に改めた。
二〇二〇年は、元号が昭和から平成、そして令和となって二度目の東京オリンピックがあるし、時代の節目とも言え、桜雪前線が現れる可能性が高いのではなかろうか。
その他
公開:20/03/08 08:43
更新:20/03/08 08:45
前線 梅雨 粉雪 白銀 花冷え 花吹雪 名残雪 平安時代

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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