ある知人との会話

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彼女は私に会うたびに、必ず同じことを聞いてくる。
「ねえ、あなたご兄弟はいらっしゃるの?」と。

一年に一度か二度、顔を合を合わせる程度だから、質問したことすら忘れてしまうのだろう。
仕方がないと言えば仕方がないが、
はっきり言ってあまり面白いものではない。

それだから私はささやかな抵抗として、
彼女にそう問われるたびに、
兄弟の数を一人ずつ増やしていくことにした。
案の定、彼女はそのことにちっとも気が付かないようで、今や私は10人兄弟の長男坊、来年にはおそらくもう一人、妹か弟が生まれるだろう。

そうそう、彼女は私の答えを聞くとき、
「そんなにいらっしゃるの!」といつも大袈裟に驚いたふりをする。
だから私も真似をしてわざとらしくリアクションしてみせるんだ。
先日、彼女に会った時ももちろんそうしたさ。
だって彼女は確か、子供が11人だか12人だかいるとそう言っていたからね。
その他
公開:20/03/06 23:06

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