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冬の檻が風に綻ぶと、庭は浮き足立つ。
今年は早いな。耳を掠め飛ぶさんざめきに、僕は渋々腰を上げた。
雨戸を開くと、陽光が羽織りを射る。鳥か虫の聲に似て、どこか異質な響きが止む。
「たかあまはらにかむづまります。すめらがむつかむろぎ、かむろみのみこともちて」
祝詞を上せ掛け、全く同じ事を、前も思ったかと首を捻り――当然だと苦笑する。
繰り返しているのだ。僕もこの庭も、変化など訪れるはずがない。
「やおよろづのかみたちを。かむつどへにつどへたまひ」
――パシン!
目前一度。
――パシン!
胸前一度。
迎え手を打つや、庭に溢れる。雪降り月に眠った花神達が、起き直り蠢く。今年も春がやって来る。
――パン!パン!
送り手を聞いた花神が、無数の矢と化し天へ昇る。
これも同じ。不変の身体で庭へ繋がれ、天地の節目を結ぶ花守り。それが僕だ。
また忙しくなる。帰りそびれた花神を、送り届けなければ。
今年は早いな。耳を掠め飛ぶさんざめきに、僕は渋々腰を上げた。
雨戸を開くと、陽光が羽織りを射る。鳥か虫の聲に似て、どこか異質な響きが止む。
「たかあまはらにかむづまります。すめらがむつかむろぎ、かむろみのみこともちて」
祝詞を上せ掛け、全く同じ事を、前も思ったかと首を捻り――当然だと苦笑する。
繰り返しているのだ。僕もこの庭も、変化など訪れるはずがない。
「やおよろづのかみたちを。かむつどへにつどへたまひ」
――パシン!
目前一度。
――パシン!
胸前一度。
迎え手を打つや、庭に溢れる。雪降り月に眠った花神達が、起き直り蠢く。今年も春がやって来る。
――パン!パン!
送り手を聞いた花神が、無数の矢と化し天へ昇る。
これも同じ。不変の身体で庭へ繋がれ、天地の節目を結ぶ花守り。それが僕だ。
また忙しくなる。帰りそびれた花神を、送り届けなければ。
ファンタジー
公開:20/03/06 17:21
『花神の庭』
シリーズ完結&電子書籍出版記念
オープニング・リライト
花筐(はながたみ):花籠
※本編はSSGでも一部投稿。
よろしければご覧ください。
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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