ね? あ、ああ……

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「トイレはいつも『遅刻だっ』て焦りながらする。そうしないと、今が『何時』なのかを忘れてしまうから」
 部屋で飲んでいたら、そんなことを言い出した。こいつとは小学校以来の腐れ縁だが、そんな話は初耳だった。
「忘れたからって何だよ。ケツ拭いて出てくりゃ、そこが『今』だろ?」
「そう単純じゃないんだよ」
「じゃ、なんだよ?」
「子供だったり老人だったり、色々」
「ちょっと待て。それタイムトラベルじゃん!」
「それともちょっと違くてぇ」
 だが興奮した俺は「今すぐトイレでぼんやりしろ!」と、無理やりトイレへ押し込んだ。待つこと数十分。
 そいつがトイレから出てきたとき、そいつのお母さんが麦茶とケーキを用意してくれた。
「ちゃんと手を洗ってね」
「ありがとうございます」
 小学校三年生の夏だった。だが何か妙だ。
 そいつは肩を竦めて「ね?」と言った。
 俺は「あ、ああ……」としか言えなかった。
ファンタジー
公開:20/03/06 16:43

新出既出20( 浜松市 )

新出既出です。
twitterアカウントでログインしておりましたが、2019年末から2020年年初まで、一時的に使えなくなったため、急遽アカウント登録をいたしました。過去作は削除してはおりませんので、トップページの検索窓で「新出既出」と検索していただければ幸いです。新出既出のほうもときおり確認したり、新作を挙げたりします。どちらも何卒よろしくお願いいたします。
自己紹介:「不思議」なことが好きです。

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