ベンチャー浴

デマというのは恐ろしいものだ。トイレットペーパーが無くなると噂すれば、店頭に客が殺到して消える。そんな社会現象にしてしまうのだからな。新聞を見ながらそう思った。

ある日を境に、ベンチャー企業の会社に団扇を持って集まってくる若者が増えた。噂によると、ベンチャー企業の会社から出てくるオーラを左団扇であおげば、体にオーラが吸収されて就職試験に合格するらしい。今ではパワースポットになっていて、オーラを浴びることから「ベンチャー浴」とも呼ばれている。それで合格すれば世話ねぇな。デマに決まっている。

おれは団扇を買って、ベンチャー企業の会社に来た。ほかの若者たちもビルに集まって団扇をあおいでいる。みんな必死なんだな。でも、会社にとっては、通行の邪魔にもなるし迷惑だろうな。そう思っていると、数人の社員がニコニコしながら会社の宣伝や会員の勧誘などを始めた。
出してるのは「オーラ」より「欲」じゃないか。