おまもり

人間の欲望は尽きる事がない。特に儂は大金持ちの癖に金運上昇のお守りを持つ奴が大嫌いだ。これ以上金を増やしてどうする？
貧しい者に施すのなら儂も目を瞑ってやる。だが意味もなく溜め込み、無駄に浪費する。そんな嘆かわしい奴らが多すぎる。故に儂、貧乏神は金運上昇のお守りを間借りし、あくどい金持ちを懲らしめていた。
それは儂の生き甲斐だった。だが今はお守りを持つ金持ちも少なくなった。
儂は今、貧乏だが幸せに暮らす夫婦の下で大切にされている。脇目もふらずに仕事をして、家族の幸せを一番に願う。ああ、儂の理想だ。
だが儂がいる限り、この夫婦は貧乏なままだ…その現実を変えたくて儂は熟年婚活を始めた。
こんな儂だが一緒に暮らしてもいいと言ってくれる福の神を探す為だ。そんな相手は運よく見つかった。本当に運がいい。
ふと見ると夫婦の子供が縁結びのお守りを握っていた。まさか儂も御利益にあやかれるとは思わなかったよ。