白ブリーフの男

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 ずっと尻を撫でられている。と言う。座ってからも尻をモゾモゾさせ、今も撫でられている。と尻を上げる。撫でる手は確かに生地越しに判別できた。手を重ねてみると、その手は温かかった。仔細を尋ねる。
 白ブリーフからトランクスに替えた中学二年の夏からだという。右の尻を下から上へスッと撫でていく手はゴツゴツとした男の手で、一日に何度も撫でるという。
 家業は大工だが尻が落ち着かないからよい仕事もできず、デスクワークも駄目。立ち仕事でも手が気になって仕事が手に着かない。
 直接見ることはできないか。と問うと、男は首を振りながらズボンと白ブリーフを一気に下ろした。目の前には男の尻しかなかった。感触も消えたという。
 人生を棒に振った。と、ごま塩頭の痩せた男は寂しげに笑い、白ブリーフとズボンをあげた。
 トランクスから、再び白ブリーフに替えた理由を尋ねると、男は、こちらの方が気持ちがよいからだ、と答えた。
その他
公開:20/03/04 16:46
更新:20/03/04 17:12
acworksさんによる 写真ACからの写真 シリーズ「の男」

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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