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私がこの世界に召喚された理由は、止まった時計を動かすため。それが出来るのは私だけらしい。
このままでは世界が滅ぶ。どうか力を貸して下さいと、沢山の人たちにお願いされた。
無理よ。私は修理屋じゃない。
でも、この世界は私を必要としてくれた。元の世界で誰にも必要とされなかった私のことを。
わかったわよ。やればいいんでしょ。
私は時計がある山に登った。途中、様々な困難が襲いかかった。何度もやめようと思った。だけど、旅の途中で出会った人たちの、もっと生きたい、滅びたくないという声を、一歩前へ踏み出す力に変えて、私は山を登った。
山頂で時計を見つけた。近づくと、針を止めた時計は「死にたい、死にたい」と呟いていた。
私は全てを理解した。
この時計は元の世界の私の心だ。
ごめんね。
でも、もう大丈夫。
私が時計を抱きしめると時計から光が溢れ、チクタクと針が動きだした。
その音に、私の心臓の音が重なった。
ファンタジー
公開:20/03/04 12:13

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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