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「パパ、もうしまっちゃうの?」

「どうしようかね。ゆきはどうしたい?」

「だって、夜とか綺麗だしなあ」

「じゃ、もう少し飾っておこうか」

思わず嬉しくなってしまう。できた娘だ。母親のしのぶを早くに亡くし、私が男手ひとつで育ててきた。今年の6月で12歳になる。

「大好きなパパのためにね」

そう言ってゆきがいたずらっぽく笑うが、私は知っている。ひな人形をしまうのが遅くなると婚期が遅れるというのは俗信だと。

「ゆきの好きにしていいんだからね。パパのことは気にしないで。」

「大丈夫。これでもパパの娘なんだから、自分のことはちゃんと自分で決めるから。」

「そうかい。じゃ、もう少しこのままでいようか」

女雛の欠けた三段飾りの上段から、稚児に向けて私は微笑んだ。
ファンタジー
公開:20/03/04 13:00
319 ひな人形 オオカミの自信作

武蔵の国のオオカミ( ここ、ツイッタランド、タイッツー )

武蔵の国の辺境に棲息する“ひとでなし”のオオカミです。

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